不動産コラム

2026/07/22 09:00
空室対策
賃貸管理
賃貸経営

原状回復工事費はなぜ高騰しているのか?
世界情勢から読み解く、築古物件オーナーが今考えるべき賃貸経営戦略

「退去が出るたびに原状回復工事費が上がっている気がする」
「以前と同じ内容の工事なのに、見積額が大きく違う」
「空室期間を短くしたいのに、工事の手配が思うように進まない」

近年、このようなお悩みを抱える賃貸オーナー様が増えています。特に築20年以上のアパートやマンションを所有されているオーナー様にとって、原状回復工事費の高騰は収益に直結する大きな経営課題となっています。

これまで原状回復工事は、退去後に行う当たり前の業務として捉えられてきました。しかし現在は状況が大きく変わっています。工事費の上昇は、単に施工会社や材料価格の問題ではありません。中東情勢の緊迫化、原油価格の変動、物流コストの上昇、円安、人手不足など、世界経済全体の変化が日本国内の賃貸住宅経営にも影響を及ぼしています。

つまり、これからの賃貸経営においては、「原状回復工事をいかに安く済ませるか」ではなく、「原状回復工事をどう経営に活かすか」という視点が求められています。今回は、原状回復工事費が高騰している理由と、その時代においてオーナー様が取るべき対策について、賃貸経営の視点から考えてみたいと思います。

原状回復工事費が高騰している3つの理由

原状回復工事費が高騰している背景には、大きく3つの要因があります。

原油価格の上昇による建材価格の高騰

中東地域は世界有数の原油供給地であり、紛争や地政学的リスクが高まると原油価格が上昇しやすくなります。原油はガソリンだけでなく、多くの住宅建材の原材料でもあります。
原状回復工事で使用される、

  • クロス(壁紙)
  • クッションフロア
  • 塩ビシート
  • 接着剤
  • 塗料

などの多くは石油由来製品です。原油価格が上昇すると製造コストが増加し、結果として建材価格にも反映されます。 そのため、「前回は20万円だった工事が25万円になった」というケースも決して珍しくありません。工事内容が変わったのではなく、世界的な資材価格の上昇が影響している可能性があります。

物流コストの上昇と納期遅延

近年は国際物流も不安定な状況が続いています。中東地域には世界の海上物流を支える重要な航路が存在しており、情勢悪化によって船舶の迂回運航などが発生すると、輸送期間の長期化や運賃上昇につながります。
現在の住宅設備の多くは海外で生産されています。

  • 給湯器
  • エアコン
  • 水回り設備
  • 一部建材

などの納品遅延が発生すると、原状回復工事全体の工程がずれ込み、募集開始時期にも影響が及びます。

建設業界の人手不足

見落とされがちですが、人手不足も工事費高騰の大きな要因です。建設業界では職人不足が深刻化しており、人件費は年々上昇しています。原状回復工事は比較的短工期の案件が多いため、繁忙期には職人の手配が難しくなり、工期の長期化や施工費上昇につながることがあります。 これら3つの要因が重なり、原状回復工事費は構造的に上昇しやすい環境となっているのです。

工事費より怖い「空室による機会損失」

オーナー様が最も気にされるのは工事費ですが、実は工事費以上に大きな損失となるのが空室期間の長期化です。
例えば家賃8万円の部屋で、

  • 1か月募集開始が遅れる
  • 内装工事が予定より長引く
  • 設備納品が遅れる

といった状況になれば、それだけで8万円の機会損失が発生します。2か月で16万円、3か月で24万円と、損失額はあっという間に大きくなります。つまり賃貸経営において重要なのは、「工事費を数万円下げること」ではなく、いかに早く入居募集を開始できる状態にするかという視点です。

私たちパワーコンサルティングネットワークスでは、原状回復工事を単なる修繕業務としてではなく、収益回復スピードを左右する経営課題として捉えています。なぜなら、退去後の対応スピードは、そのまま年間収益や入居率に影響するからです。

築古物件オーナーが今行うべき3つの対策

1.退去前から準備を始める

原状回復工事費が高騰し、工事日程の確保が難しくなっている今、重要なのはスピードです。
退去連絡が入った時点で、

  • 現地確認
  • 募集条件の見直し
  • 概算見積り
  • 工事計画

を前倒しで進めることで、空室期間の短縮につながります。

2.価格だけで施工会社を選ばない

工事費が上がる時代だからこそ、最安値だけで判断することは危険です。
確認すべきポイントは、

  • 材料品質
  • 保証内容
  • 施工実績
  • 工期の確実性
  • 追加費用の有無

です。安い見積りが結果的に高くつくケースも少なくありません。

3.原状回復を資産価値向上の機会にする

築年数が経過した物件では、退去のタイミングこそ物件価値を見直すチャンスです。
例えば、

  • アクセントクロス導入
  • インターネット無料設備
  • LED照明化
  • 宅配ボックス設置
  • 水回り設備更新

などは比較的費用対効果の高い改善策です。原状回復を「現状に戻す作業」と考えるのではなく、「競争力を高める投資」と考えることで、入居率改善や家賃維持につながる可能性があります。

パワーコンサルティングネットワークスの考え方

管理から経営へ。原状回復工事を収益改善のチャンスに変える

私たちは、原状回復工事を単なる修繕ではなく、「資産価値向上と収益最大化のための経営施策」
と考えています。工事費高騰の時代だからこそ、

  • どこまで修繕するべきか
  • どこに投資するべきか
  • 何を維持し、何を更新するべきか

を戦略的に判断することが重要です。築古物件だから家賃を下げるしかない。築年数が経過しているから競争力がない。そう諦める前に、まだできることは数多くあります。

私たちは市場動向や競合分析、入居者ニーズを踏まえながら、一棟一棟に合わせた原状回復計画や設備更新計画をご提案しています。世界情勢を変えることはできません。しかし、その変化に対応した経営判断を行うことはできます。 これからの賃貸経営で求められるのは、場当たり的な対応ではなく、長期的視点に立った資産運用です。

空室率の上昇や工事費の高騰にお悩みのオーナー様は、ぜひ一度ご相談ください。原状回復工事から資産価値向上まで、「管理から経営へ」の視点でサポートいたします。

株式会社パワーコンサルティングネットワークス
プロパティマネジメント事業部|資産価値を守り、育てる管理のプロフェッショナル

私たちプロパティマネジメント事業部は、賃貸管理・建物維持・収益改善など、不動産の運用・管理に関するあらゆる課題に対して、専門的な視点から「最適な管理戦略」を見極め、ご提案する部門です。