不動産コラム
2026年路線価の上昇から考える賃貸オーナーの相続対策

「まだ相続は先」と思っている間に、土地評価は静かに上がっています。
2026年分の路線価が公表され、一都三県では主要駅周辺や再開発エリアを中心に、土地評価の上昇が続いていることが確認できます。路線価は相続税・贈与税で土地を評価する際の基準となるため、賃貸マンション・アパート・貸店舗・貸地をお持ちのオーナーにとって、単なる地価ニュースではありません。「相続税の増加」「共有化による揉めごと」「納税資金不足」に直結する重要なサインです。
一都三県の最高路線価に見る2026年の動き
国税庁が公表した都道府県庁所在都市の最高路線価を見ると、東京・さいたま・千葉では大きな上昇が目立ちます。横浜も上昇しており、首都圏の土地価格は「局地的な上昇」から「広い範囲での底上げ」に移っているように見えます。
| エリア | 最高路線価の所在地 | 2026年分 | 前年比 | 相続対策上の見方 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 中央区銀座5丁目 銀座中央通り | 53,360千円/㎡ | +11.0% | 高額不動産の分割・納税対策が急務 |
| 埼玉県 | 大宮駅西口駅前ロータリー | 6,660千円/㎡ | +12.5% | 駅前・再開発エリアの評価上昇に注意 |
| 千葉県 | 千葉駅東口駅前広場 | 2,690千円/㎡ | +8.5% | 駅前商業地から周辺住宅地へ波及確認 |
| 神奈川県 | 横浜駅西口バスターミナル前通り | 17,600千円/㎡ | +2.3% | 大型駅周辺は安定上昇、資産組替え検討 |
路線価上昇が賃貸オーナーに与える3つの影響
第一に、相続税評価額が上がります。路線価は毎年1月1日時点の地価動向を踏まえ、公示価格等の80%程度を目安に定められます。路線価が上昇すれば、土地を中心に相続財産の評価が膨らみ、これまで「相続税はかからない」と考えていたご家庭でも、課税対象となり相続税の申告が必要になるケースもあります。
第二に、納税資金の準備が難しくなります。賃貸不動産は収益を生む一方、現金化には時間がかかります。相続開始後に慌てて売却しようとしても、借家人対応、境界確認、修繕履歴の整理、賃貸借契約書の確認などが必要となり、希望価格で売れないことがあります。
第三に、分割トラブルが起きやすくなります。不動産の評価が高くなるほど、相続人間で「誰が取得するのか」「代償金はいくらか」「共有でよいのか」という問題が大きくなります。特に賃貸アパート1棟、貸地、底地、借地権が絡む不動産は、単純に面積や固定資産税だけで分けることができません。
固定資産税課税明細書と路線価を一緒に見る
相続対策の第一歩は、毎年届く固定資産税課税明細書を確認することです。課税明細書には、土地・建物の価格、課税標準額、軽減額、税額などが記載されています。この課税明細書を正しく読み解くことで、ご自身の不動産がどのように評価され、税額がどの仕組みで決まっているのかを把握できます。
ただし、固定資産税評価額と相続税評価額は同じではありません。固定資産税評価額は固定資産税の計算に使われ、路線価は相続税・贈与税の土地評価に使われます。賃貸オーナーは、固定資産税課税明細書で「所有不動産の一覧」を確認し、路線価で「相続税評価の方向性」を見ることが重要です。
図解:相続対策はこの順番で確認する
① 所有不動産の確認・整理
② 路線価により評価額を確認
③ 分割・納税・節税(活用)を設計
今すぐ確認したいチェックポイント
□ 所有物件ごとに、土地・建物・借地権・底地・共有持分を一覧化しているか
□ 路線価が上がっているエリアの物件について、概算相続税を試算しているか
□ 相続人の誰がどの不動産を引き継ぐのか、家族で大枠を共有しているか
□ 納税資金として、現預金・生命保険・売却候補物件を整理しているか
□ 空室、老朽化、賃料相場との乖離、契約書不備など、評価や売却に影響する問題を把握しているか
【チェックポイント項目数】
| チェック項目 | 相続時の問題 | ご提案 |
|---|---|---|
| 0 | 相続時の問題:大 | 現状の整理をお薦めいたします。 (相談の際にはご連絡ください) |
| 1~2 | 相続時の問題:中 | |
| 3~5 | 相続時の問題:小 | 不明な点はお問合せください。 |
賃貸オーナーにおすすめしたい対策
路線価が上昇している局面では、「何もしないこと」が一番のリスクになる場合があります。対策としては、まず概算相続税の試算を行い、納税資金が足りるかを確認します。次に、収益性の低い不動産や管理負担の大きい不動産について、売却・買換え・建替え・修繕・法人活用などの選択肢を比較します。さらに、遺言や生命保険を活用し、相続人間で不公平感が残らない分け方を設計することも大切です。
特に一都三県の賃貸オーナーは、土地評価の上昇と建築費の高止まりが同時に起きています。「建てれば相続対策になる」という単純な判断ではなく、賃料水準、借入返済、空室リスク、将来の売却可能性まで含めて検討する必要があります。
おわりに:路線価の公表は、相続対策を始めるきっかけです
路線価の上昇は、資産価値が高まっているという良い面がある一方、相続の分割・納税の問題を先送りできないというメッセージでもあります。賃貸経営は、毎月の家賃収入だけでなく、次世代へどのように承継するかまで含めて考える時代です。
□「自分の物件では相続税がどのくらいかかるのか」
□「売却すべき物件と残すべき物件を分けたい」
□「共有名義や貸地・借地があり整理したい」
などのお悩みがございましたら、早めに専門家へご相談ください。課税明細書、賃貸借契約書、固定資産税通知書、路線価をもとに、相続・不動産・土地活用の視点から最適な選択肢を一緒に整理いたします。
ご相談例:概算相続税の試算/不動産の分け方/売却・買換え/貸地・借地の整理/納税資金対策